気になっていた新作がNetflixにきたので、紹介&レビューをしたい。
『スティーブ』概要
もはや崩壊寸前の非行少年が集められた更生支援施設。
校長スティーブは日々トラブル対策に奔走していた。
しかし彼も非行少年同様に大きな問題を抱えていたのだった。
ティム・ミーランツ監督作品。
・主なキャスト
- キリアン・マーフィー:スティーブ役
- ジェイ・リクルゴ:シャイ役
- トレイシー・ウルマン:アマンダ役
- リトル・シムズ:ショーラ役
- エミリー・ワトソン:ジェニー役
『スティーブ』見どころ紹介(ネタバレなし・まだ観てない人向け)
まず第一に挙げるとすると、キリアン・マーフィーの演技力と存在感だろう。
抜群に演技が上手く、不安定なスティーブというキャラクターを見事に演じ切っていた。
さらに彼と肩を並べるくらい凄かったのが、非行少年たちを演じた役者たちだ。
彼らも激しくも繊細な非行少年という難しい役どころを見事に演じていた。
臨場感のある撮影・演出も見どころの一つだ。
この映画、撮影方法ゆえか映像がブレることが多い。
それによりリアルで臨場感にあふれる映像をつくりだしていて、この映画にマッチしている。
行き場をなくした子供たち、またその支援施設の必要性など、社会問題を内包したメッセージ性のある映画であることも重要なポイントだ。
また上映時間が短く、話がテンポよく進んでいく。
ストーリーもよくできているので、退屈せずに観ることができるはずだ。
以上見どころ紹介終了。
『スティーブ』レビュー(ネタバレあり・もう観た人向け)
かなり面白い映画であった。
そして意外だったのが、まさかの爽やかな気持ちにさせてくれる映画だったということ。
最近Netflixで話題になったアドレセンスに似ているので、そのような非常にヘビーな内容になるかと思っていた。
しかし蓋を開けてみたら、内容は重たいものの最終的にはどこか希望のある内容となっていた。
シンプルに感動したし、よくある浅いお涙頂戴ものではなく哲学的でありながら心を動かしてくる映画であったのが良かったように思う。
この映画で1番印象的だったのが、シャイというキャラクターが入水自殺するためにため込んでいた石を、施設の窓ガラスに投げまくるシーン。
この文章だけ読むと全く訳がわからない感じである。
しかしそれまで丁寧になされてきたシャイの悲しみ、心の闇、希死念慮の描写の積み重ねがあるからこそ、この謎行動に解放感・強いカタルシスがある。
絶望的な状況にいながらも、きっとどこかに希望はあるのだとこちらも救われるような気持ちになった。
主人公スティーブ、映画の冒頭から明らかに限界がきている。
過去のトラウマ、人手不足による激務、激しい非行少年たちへの対応などからアルコールに溺れている状態だ。
しかもこれらに加え支援施設の閉鎖が決定されてしまう。
もはや完全に救いがないといった状態のまま映画は終盤を迎える。
最後のシーンではこれから彼がどうなってしまうのか明示されていない。
そもそもこの映画、支援施設の閉鎖・スティーブのアルコール問題・人手不足など、これらの問題点が解決しないで終わる。
なのでもしかしたらスティーブは限界がきてしまい…という展開も頭によぎるのである。
個人的にはさまざまな問題が解決して、彼に救いのある未来が待っていると信じたい。
映画でも描写されているとおり、世の中はどんどん効率化を推し進めている。
非行少年たちの厚生施設も例に漏れず無駄だとみなされ、なくされていく現実がある。
しかし、その効率化を推し進めた先にどんな世界が待つのか。
最後のシーンでスティーブが録音したテープで語られているとおり、非行少年たちは感情的になりやすいが、確かに素晴らしいといえる側面も持ち合わせている。
そんな彼らの居場所をなくしてしまえば、彼らの可能性もゼロにしてしまうのではないだろうか。
なんでもかんでも効率化すればいいってもんじゃない、本当にそうだなと思わされる。
若干ヘビーな映画だが、考えさせられるものがあった。
まとめ 個人的評価80点
マイナス要素はないといっていいだろう。
傑作だった。
オススメである。
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