Netflixでランキング入りしていた『ストロー 絶望の淵で』を観たので、紹介とレビューをしていきたい。
あらすじ
貧しいなかでもめげずに頑張るシングルマザー。
そんな彼女に人生至上最悪といってもいい1日が訪れる。
次第にそれは大きな事態へと発展していく。
タイラー・ペリー監督作の社会派なサスペンス。
主なキャスト
- タラジ・P・ヘンソン/ジャナイヤ・ウィルトキンソン役
- テヤナ・テイラー/レイモンド刑事役
- シェリー・シェパード/ニコール支店長役
- グリン・ターマン/リチャード店長役
観てない人向け!作品の見どころ紹介
この映画はサスペンスとしてとても面白くまとまっていながら、現代社会の闇にも上手く切り込んでいる。
例えば経済格差、差別、母子家庭、それらをサポートするための制度が圧倒的に足りていないことなどだ。
おそらくこの映画の経済格差の描写は、誇張抜きのマジなのだと感じる。
そのくらいリアルな描写なのだ。
勝ち抜くものはどんどん勝ち抜いて富んでいき、負け続けるものはどんどん貧困に突き進んでいく。
現代社会の資本主義の残酷さをこれでもかと見せつけられる。
母子家庭についても非常に説得力ある描写がなされている。
観ていて本当に可哀想になってくるほどだが、これらの徹底的に容赦のないキツい展開が続く。
世の中の見たくない側面ではあるが、これも現実なのだと思わされるのだ。
サポートも充実していないからこそ余計に追い詰められてしまう現状。
そしてこういった”弱者”とみなされる人たちが見放されたらどうなるかー。
これは対岸の火事ではなく、俺たちが住んでいる日本にも当てはまるのではないだろうか。
少し前にネットで話題になった『無敵の人』というワードにも通じるだろう。
お金もなく頼れる人もいない、そういった人たちが社会からも見捨てられたとしたらどうなるのか。
その答えがある種この映画に出ていると思う。
こういった現代的な社会問題を内包しながら、エンタメとしてもしっかり作られていてとても面白く見どころ満載な映画だと思う。
観た人向け!個人的評価70点 ネタバレありレビュー
興味深く、面白い映画だった。
正直観る前は結構微妙そうな映画だな~と思っていたのだが蓋を開けたらびっくり、いやはや面白い。
中弛みせずに最後まで一気に観てしまった。
この映画に惹きつけられるポイントの一つは、次々に襲いかかってくる理不尽な出来事の数々だ。
シングルマザーの主人公ジャナイヤは二つの仕事を掛け持ちし、余裕のない暮らしのなかで必死に一人娘を育てるシングルマザー。
ただでさえ大変なところに、矢継ぎ早についてない出来事が起こる。
スーパーの仕事をクビになる、家賃の滞納をギリギリ払えず追い出される、娘を児童保護団体に連れ去られる、車の事故を自分のせいにされるなどだ。
そして仕事先に給料をとりに行ったときに、強盗に巻き込まれてしまう。
なんとか強盗を返り討ちにして殺すも、店長に「お前もグルだったんだ」と通報される始末。
ついに限界が来たジャナイヤは店長を撃ち殺してしまう。
この店長もなかなかにクソ野郎なのだが、実際問題ジャナイヤの分の仕事も肩代わりしているので気持ちがわからないでもない。
子育てをしながら働くシングルマザーの仕事における問題点についても考えさせられる。
どんどん不幸の奈落へと転がり落ちていくジャナイヤがあまりにも可哀想だが、怖いもの見たさというかなんだかんだで面白く惹きつけられてしまうのは人間の業なのか。
このジャナイヤ容疑者状態からの銀行での立てこもりパート。
これがこの映画の第二部だろう。
勘違いで銀行強盗と間違われ通報されるジャナイヤ。(銃を向けて小切手を換金させようとしている時点で当たり前っちゃあ当たり前だが…)
当然警察が来て投降しろと言うが、車の事故をジャナイヤのせいにした警官がいるからそいつがいなくなるまでは投降しないというジャナイヤ。
もはやコメディだが、この攻防戦が結構楽しいのだ。
ジャナイヤも悪人ではないので調子が悪そうな高齢者夫婦はすぐさま解放する。
また糖尿病を患っているおばあちゃんは座らせてあげたりもする。
このなんだかホッコリする感じは、普通のサスペンスにはない味わいでいい。
この攻防戦パートでのキャラ関係で最もフィーチャーされているのは、レイモンド刑事と銀行の支店長ニコールだろう。
レイモンド刑事は早くからこれは銀行強盗ではなく、感情的な行き違いから生じた事件なのではと見抜いていた優秀な刑事だ。
またシングルマザーに育てられた生い立ちからジャナイヤの境遇への理解もある。
終盤のFBIに歯向かい、ジャナイヤのために警官の画像を見せにいくところはとてもグッときた。
銀行の支店長ニコールは完全にただ巻き込まれたただの被害者なのだが次第に不幸のどん底にいる、また同じ子供を育てるものとしてジャナイヤに共感を深めていく。
この異常なシチュエーションのなかで芽生える不思議な絆、あふれる人情味はこのダークな映画の中での少ない良心であり、また非常に面白い部分だ。
終盤、ついに問題も解決され人質解放・ジャナイヤも投降するとなったときに驚愕の真実が発覚する。
なんとジャナイヤの娘はすでに亡くなっており、劇中に出ていた娘の姿は彼女の妄想だったのである。
これは予想してなかったのもあり「嘘だろ!?」と衝撃を受けた。
ここまでただでさえ救いがない展開が続いていたのに、さらに輪をかけて救いのないオチが待っているとは…。
確かにこのどんでん返しで映画への印象は強まったが、正直ジャナイヤにはもうちょっと救いがあって欲しかったかな~。
その後にエピローグがあるでもなく即連行されてバッと映画が終わるあっけなさも無常観を強めていると感じた。
まとめ
暇つぶしにサッと観ようと思っていたが予想外に面白かった。
エンタメ性とメッセージ性が高いレベルで融合している良作である。
オススメだ。
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