最近Netflixで湊かなえ原作の連続ドラマ『落日』を観たので、感想をつらつら書いていこうと思う。
あらすじ
新人脚本家の甲斐真尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、15年前に起きた『笹塚町一家殺害事件』についての映画を撮りたいので脚本を書いてほしいという相談を受ける。
兄が妹を自宅で刺し殺し、家を焼き両親をも殺したという痛ましい事件。
二人はこの事件を追及する過程で図らずも自らを見つめなおすこととなり、また衝撃の真実へと近づいていく。
キャスト
- 北川景子:長谷部香 新進気鋭の映画監督
- 吉岡里帆:甲斐真尋 新人脚本家
- 竹内涼真:立石力輝斗 『笹塚町一家殺害事件』の犯人
- 久保史緒里:立石沙良 立石力輝斗の妹
- 黒木瞳:大畠凜子 ベテランの脚本家 甲斐真尋を助手として雇っている
作品のテーマや見どころ
このドラマにはあらゆるテーマが内包されている。
例えば家族における問題、複雑な人間関係、芸術などの表現がもたらすもの、真実・現実を直視するということのむずかしさや重要性などだ。
このドラマには主に主人公2人の家族と『笹塚町一家殺害事件』の犯人力輝斗の家族が描かれる。
どの家族もいろいろな角度から見て、さまざまな問題を抱えていることが明かされる。
この『家族』というものが、人にどのような影響を与えるのか…それが物語にも密接に絡まっており、重要なポイントにもなっている。
湊かなえはこれまでもこのテーマを繰り返し用いて作品を書いてきているらしいので、彼女にとっても大切なモチーフなのだろう。
芸術、このドラマでは映画だが、そういった表現が人々にもたらすものもテーマの一つとなっているように思う。
みせかけではなく、真に研ぎ澄まされた表現というのはそれに触れる人に大きくプラスの影響を与える可能性がある…創作や表現というものの根本的な価値をこのドラマは問うている。
またこのドラマで最も伝えたいであろうところは、過去の真実を見つめ現実を受け入れることの必要性だろう。
真尋と香は映画製作を進めるにつれて己の過去、また事件の目をそむけたくなるような真実に直面していく。
そしてそれらの真実が物語をどこに運んでいくのか、そこも見どころの一つだ。
ネタバレありの感想
これは…個人的に50点くらいの出来だった。
全4話という短すぎず長すぎないボリュームは好感触。
安易に派手な演出などで誤魔化さず、静かで厳かにシーンが進んでいくのも作品にマッチしている。
俳優たちの演技もみんなよかった。
特にサイコパスな妹である立石沙良役の久保史緒里、引きこもりの兄で今回のキーパーソンである力輝斗役の竹内涼真はとてもハマっていた。
音楽も良かったように感じる。
作品のテーマは家族関係・虐待やそれに伴う優生思想の歪さ、過去を受け入れ生きることの大切さなど重いながらもとてもメッセージ性の強いものを扱っているのもいいと思う。
だからこそご都合感、強引な設定がノイズとなって没入感を削がれてしまったのが残念だったかなぁ。
例えば力輝斗と真尋の姉が恋人だったって展開はいくらなんでも都合がよすぎるというか、この筋書きにするために無理くりそういう設定にした感が強くないか?
香が同級生を自殺に追い込んだと思っていたら実は母親が原因だから関係なかったんだよ~って、そんな安直な解決の仕方でいいのか!?って思ってしまった。
ただ香が「自分が原因で2人死んでしまった…」をやりたかっただけな気がするわ…
真尋の姉が死んだことから逃げつづけていた父と真尋が、現実を直視して再生していくところはよかった。
ベテランの脚本家が真尋にキラキラした上っ面のものじゃなく、虚飾のない真実の表現でないと人々に届かない、意味がない語るシーンもいい。
ここでの映画や表現の本質的な、どうあるべきかという話は主人公たちが真実を見つめ先に繋げるということの補強にもなっているのもうまい。
これらの要素が良かったからこそノイズになる部分が惜しい。
フィクションとはいえあまりに突拍子もない設定をいれてしまうとものすごく安っぽくなるし、一気に冷めるものなのだ。
説得力が皆無になるというかね…
ジャンルはミステリーだが、そこまで驚くほどのものでもなかったというのも正直な感想だな。
真相がそこまでのものでもないのに加えて設定はめちゃくちゃ強引にしてるから余計に微妙。
もう少し意外性が欲しかったな。
客観的な作品の評価
Filmworksでの評価は3.7点となかなか高い点数だ。
レビューを拝見すると結構絶賛している人が多い。
ネガティブな意見を書いている人は少数派のようだ。
俺はやはり世間からズレているのだろうか…いやいくらなんでも設定に無理ありすぎじゃね?って思うんだけど…
とはいえ世間的には受け入れられているようだ。
感想のまとめ
作品の重厚なテーマ性に脚本がついていけずリアリティが出ていない、そのため微妙なドラマとなってしまった感が強い。
湊かなえ原作なら『告白』の方が俄然面白かったな。
ということで点数は50点!
以上。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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